食品のトランス脂肪酸含有量を表示しようという指針が出ました。
食品のトランス脂肪酸含有量を表示しようという指針が出ました。
食品のトランス脂肪酸含有量を表示しようという指針が出ました。
消費者庁が、食品業界にトランス脂肪酸の
食品含有量を表示するような指針を策定した。
 
 
トランス脂肪酸というのは、脂肪の一種です。
メインの栄養素について「脂質・炭水化物・タンパク質」と
ざっくり考えるのはすでに古く、細分化しなくては、
意味が無いことがわかっています。
「魚の脂肪は身体にいいよ♪」 というのも、その一部。
「トランス」というのは、脂肪の分子構造のお話。
 
 
トランス脂肪酸の摂取は、
心臓の病気を患う確率を上げることが知られている。
また悪玉コレステロールを上昇させ、善玉コレステロールを減少させ、
慢性的な炎症を示す因子を上昇させることでも知られている。
科学的証拠が積みあがってきたのが1990年頃から。

2000年になってヨーロッパの各国で政策が敷かれ始め、
アメリカでも2006年には食品への表示が義務化されている。
2005年からニューヨーク市は、レストランに工業的加工を経た
マーガリンやショートニングなどの使用を禁止し、
世界中で行政が動いている。


そして日本もその流れに乗っかったわけです。

正直な感想としては、
研究が少ないのによくやるな・・
食品会社がかわいそうだな・・
という感じ。
研究の量も多くないし、
何より測定技術や人を対象にした研究手法が確立していない。


限られた研究からでも、現代の日本においてトランス脂肪酸が、
健康に影響を与える事は、自分の知る限り支持されていない。
また欧米に比べて摂取量がかなり低いことがわかっており
人口全体のレベルで懸念するべきか否かも明確ではない。
たとえば、トランス脂肪酸の摂取が高いから、
何か健康状態が悪化しているだとか
直接、日本人で検討した研究は自分の知る限り無い。


一応、消費者庁の資料にも書いてあるけれど、
トランス脂肪酸には、
■1■ 質の悪い油による調理によるもの、
■2■ 食品加工の過程で生じるもの、
■3■ 反芻動物(牛)のお肉や乳製品に自然に含まれているものと
自分の知る限り3種類ある。

■1■ 質の悪い油による調理によるものっていうのは、
ファーストフードのフライドポテトや揚げ物など。。
つねに熱っせられた油は変性することが疑われています。
欧米のマクドナルドやケンタッキーフライドチキンの製品に
トランス脂肪酸がかなり多く含まれていることが
有名な医学雑誌に紹介されています。
(医学論文に食品の成分が紹介されるというのはとっても稀)

■2■ 食品加工の過程で生じるものというのは、
マーガリンやショートニングに含まれる類。
植物油を固形化させる際に、生じることが知られています。
でも、製造の仕方で、トランス脂肪酸が生じないことも知られています。
 
■3■ 反芻動物から得られるトランス脂肪酸は、
主に2005年以降の研究から、身体に良くないばかりか、
よいかもしれないことも示唆されており、その科学はまだ落ち着いていません。
 


こうした3つの類から考えて、ニューヨーク市や欧米各国は
工業的に加工された食品に限定して、規制を敷いたりしている。
そのあたりの細かに区別するのが、トランス脂肪酸の規制には必要と思う。
ミルク由来のトランス脂肪酸を多く含んでいるチーズなど
たくさん摂取するヨーロッパ人にとっては当然だろう。

今は、トランス脂肪酸を、さらに細かく分けることができ
安全なものとそうでないものを選り分けることが出来る。
乳製品に多く含まれている類など、安全であることも示唆されている。


いろいろと、トランス脂肪酸の種類などの科学も蓄積している中、
日本の消費者庁はもっと慎重になるべきでは・・と思う。

本当は安全なのに危険性あり・・
と判断されるものなど出てくるのでは?

生クリームなんて、乳脂肪を凝縮させたものなのだから、
絶対、トランス脂肪酸の含有量が高くなる。
トランス脂肪酸の含有量を表示したところで混乱を招くだけとなるのでは?
 

また100グラムあたりの含有量について
ある一定量以下ならゼロとしてよいということ。

つまり、「ゼロ」と表示されていても、
実際の摂取量が100グラムを越えるものなら
当然、摂取量も増えていく。
菓子パンなど、その辺の網をくぐってくる物があると思う。

(糖分も、食品100g、飲み物100mlあたり0.5g未満であれば
「ノンシュガー」と表示することが許されるし、
5kcal未満であれば、「ノンカロリー」と表示することができる。
これについて、「飲みすぎたら意味が無いだろ」って指摘ができる。
このように食品表示の世界には、けっこう怪しいものが多い。)


トランス脂肪酸の食品含有量はそもそも低いので、
機械の検出力に依存するところもある。
「ゼロ」にせざるを得ないレベルの食品もあるかもしれない。
その辺の記載がないのが科学者としては残念。
(日本の多くの研究施設でも、微量の脂肪酸でも測定できる
高性能の機械は導入されていない)

また、トランス脂肪酸の摂取量を制限する・・ということは、
菓子パンやファーストフードなど、普通の食の改善のターゲットと
なりそうなものばかりで、本当に「トランス脂肪酸」っていう一種に
着目する必要があるのか?という疑問もある。

 
欧米では食品の栄養素レベルの表示など、かなり昔から行政の力が及んでいるので
近年のトランス脂肪酸の動向についても食品業界の対応も早いと思う。
日本はそうはいかないのでは・・?という懸念もある。

  
また、アメリカの行政と消費者庁と異なる点の1つとして、
アメリカの行政は、どの科学論文を参照にしているのか明確にしているが、
日本の消費者庁は明確にしていないところがあげられる。
日本の情報を読んで「このデータどっからきたの?」という点がいくつかある。
自分としてはイライラする。

 
消費者庁の動きは欧米の動きにひっぱられただけで
日本の現状や日本の科学者のこれまでの貢献を無視している。
(あるいは、偏った情報を誇張している)
その辺の批判は当然あるだろう。
その他、多くの疑問が残されたまま、動き出した消費者庁・・
  
   
政府と科学者と消費者と、
仲良く政策を練っていくのがよいと思うのだけど。
今後、どんな動きがあるのやら。
食品化学、栄養学関係の学会など、
今後、声明を発表してほしいと思う。
(因みに私の専門は、循環器系疾患、糖尿病に関与すると考えられている
血中のコレステロールや物質などのデータ解析・研究です)
 
 
1枚目の写真はネットで拾った、トランス脂肪酸が
多い類の食品のお写真でごじゃる。 
ファーストフードのドーナツなど避けるのが無難・・

2枚目は、欧米各国のマクドナルドのポテトの
トランス脂肪酸の含有量。
国によってばらつきがあるのが興味深い・・
日本ではどうなのか!?

3枚目は、米国の食品表示の例。
この形式であらゆる食品に表示が義務付けられている。
国民の理解が追いついていないという懸念もある。
日本のそれと比べるとかなり厳しいと思う。

コメント

地球儀
2011年2月24日16:25

Bowさん、こんにちは。

勉強になりました。
菓子パン、時々無性に食べたくなるのですが、やめよう…

加工度の高い食品はなるべく避けることで様々のリスクを避けられるのかしら、と
ぼんやり思っています。

ラクス
2011年2月24日19:25

Bowさぁ~ん

この前、ワイドショーでも取り上げられた話題で
日本でもゼヒ!表示して欲しいと消費者からの声があがってるにも関わらず
メーカー側の反発もあってなかなか進まないと言ってました

ま、ワイドショーですからね(^^;
もっと大々的に広く知って貰わないとねぇぇぇ

「買ってはいけない」と言う本が昔、出たころに
すでに日本でもマーガリンの健康被害について
警鐘を鳴らしてた記者もいたんですけどね
やはり大手食品メーカーの力には叶わないのですよ;;;

知らせないと言うのは罪にはなりませんが
隠すと言う事は大罪です
ぜひ!Bowさんの研究が多くの方々に広まりますよう!
期待を込めて~~~

三三七拍子~♪
ちゃちゃちゃ!ちゃちゃちゃ!ちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃ!
頑張れガンバレBowさ~んソレ~~~(-^0^-)/

ブログ脳外科医
2011年2月24日20:39

勉強になりました.正しい知識は広める必要があると思います.
またよろしくお願いします.

Bow
2011年2月25日10:46

◇地球儀さん、こんにちは!
コメントありがとうございます。

お食事、いろいろご配慮されておいでですよね。
トランス脂肪酸が含まれているとはいえ、
週に1度程度であれば問題ないでしょう。
注視に値する摂取量をコンスタントに続けるのは
実際、大変でしょうね。

研究が欠けているとはいえ、
トランス脂肪酸を悪者として考えるというよりも、
常識的に、、そして総合的に考えて
ファーストフードはもちろん、菓子パンや
どんな油を使っているか不明の市販の揚げ物など
避けるのがよいかと思います。

やっぱり身体によくて美味しいものを楽しめる食生活がいいですね!

Bow
2011年2月25日11:01

◇ラクスさん、こんにちは!
コメントと声援とどうもありがとうございます。

もしも消費者側が、
「トランス脂肪酸は極力減らすべきだ!」
と考えていて、騒ぎになっているとしたら
それは、消費者側が極端ですね。

例えばマーガリンにも製法によってばらつきがあって、
身体に良いものと悪いものがあったりするんですよ。
そういった多様さについて、食品業界は主張があると思います。
その複雑さと、消費者の理解を円滑にするのが、
政府の仕事と思いますが・・トランス脂肪酸の件については
うまくいっていないような気がしてなりません。

ちょっと飛躍しますが、私も学会やメディア、政府に
助言を求められるような業績を上げなくてはと思います・・
がんばります!

Bow
2011年2月25日11:20

◇ブログ脳外科医さん、コメントありがとうございます。
ご興味を持っていただいたようで嬉しく思います。

食物科学や栄養学の専門家が旗を振るうところですが
欧米の臨床研究・疫学研究からの医学論文を正しく読解し
日本の政策に応用できる人は数少ないでしょう。
そんな憶測も持っているので、このトランス脂肪酸の議論をきっかけに、
いろいろな議論が期待できるので良い機会と思っています。 


ところで、
医学界での利益相反の問題についてご関心があると思いますが、
本件においてもそういった可能性を疑ってしまっています。
確証はありませんが、食品含有量の指針を設けることで、
日本食品分析センターなど食物の脂肪酸解析の受注が多くなることでしょう。
その辺の利害関係など、勘繰ってしまいます。
また、消費者庁の人事や、政策に関わった専門家など、
まったく名前もわからずなんです。・・いろいろ考えさせられます。
 
日本語の論文が読めなかったりと、難はありますが
またご興味を持っていただけるようなことが書けたらと思います。

では・・
Bow

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