疫学(Epidemiology)
ヒ素に汚染された地域では、
その毒性に伴って、いろいろな疾患があり、
さらにその毒性の程度も場所によってさまざま。
個人の栄養摂取によって、暴露の影響も変わってくる。
NIHによる5年間の資金援助でデザインされた研究は、
データベースの作成から始まった。
ヒ素が井戸水より過剰に摂取されることが背景とされ、
まず、限定された地域の井戸水のヒ素含有量が測定、格付けされる。
それと同時進行で、その地域の研究対象者の、
体重、水の摂取状況、食料摂取状況、
病暦、生活習慣そして診断が行われる。
このプロジェクトは、retrospective researchで、
過去のさまざまな要因を、ヒ素の毒性と関連づけるのであるから、
診断することが研究の目的で、望ましくない状況にある対象者には、
予防の手立てを示すことにしているという。
井戸水がヒ素で汚染されていることを伝え、
予防策を教えることになるのだが、問題が多々ある。
?ヒ素の汚染は味覚、嗅覚、視覚では、確認できず、
ヒ素を高濃度含んでいても、水は澄んだままなのである。
つまり、村々に住む人にとって、汚染されているといっても納得しにくい。
?予防としての1つが、ヒ素に汚染されていない、
湖水や川の水などの、地表に現れた水を用いることだが、
これらの水はバクテリアを含んでいるので、熱で殺菌することが必要になる。
しかし、燃料の問題があり実践されにくい。?のために、
懐疑心を抱いてしまうと、もう避けられてしまう改善策なのである。
?ヒ素で汚染されている地域には、
特別な技術が施された安全な井戸を設置し、
その水を用いるように勧めるのだが、数が限られているために、
利用するとしても、水のために移動することが必須となる。
そんなのは嫌ということで、
安全に感じ取れてしまう水を使用してしまうという。
現状として、安全な水への容易なアクセスは、
限られた地域でしか、実施されていないとのこと。
診療についてはいろいろと細かい。
何よりもまず、研究の一環である事実を伝え、
それに協力してもらえるのか否かが問われる。
否定されればそこで終了。疫学はボランタリティが大前提。
社会的な内容から内科的な内容に診療が及ぶ。
水の摂取については、
グラスで何杯の水を飲むの?という質問とともに、
いつも使っているグラスの容積を計るという手段、
および、どこの井戸水を使っているかという答えから、
1日のヒ素摂取量を割り出す。
食物の摂取についても、
どれほどの期間(年、月)、どれほどの頻度(週、日)で
摂取しているか、さまざまな食材の1つ1つについて問う。
その1つ1つについて、ヒ素含有量がデータ化されているので
それから、食料からのヒ素の摂取を算出するとのこと。
体重は、基礎データであるとともに疾患の警笛にもなりうる。
AIDSのように体重の現象が著しい疾患などのように。
診断の対象は、ヒ素汚染だけではなく多種多様。
diabetes
hypertention
cancer
医学博士号所有者がせっかく診断するのだから
可能な限りの検診はしておこうというのは理解できるし、
何よりも、データをまとめたときに、
症状と過剰のヒ素との関連を見出せれば、
新しい医学的な解決策への糸口になる。
ヒ素毒に由来する症状で良く知られているのが、
meranosis (紫外線で有名な「メラニン」の過剰合成、皮膚のしみ)
leucomeranosis (meranosisが進んで、白い斑点になる症状)
keratosis (手足に現れる魚の目のようなしこり)
という、皮膚の症状なのだが、
これらは他の「有る・無し」で判断される症状より詳細に、
発症場所、おおよその面積が調べられる。
そして最後に尿検査。
たんぱく質、糖質などの含有量がおおまかに定量化される。
女性の尿に含まれる血液量については生理の影響があるので、
その検討も必要になってくる。
仕事内容で考慮すべきなのは衣服・染料業である。
染料自体、その製造過程ではヒ素にさらされる機会が多いらしい。
バングラデシュやインド特有の、
鮮やかな色彩の衣服業界の裏まで
ヒ素の問題が及んでいるということである。
またヒ素毒について?にあるように、
経済状態もヒ素暴露と関連があるので記録される。
以上に加え、教育の履歴なども記録される。
これらの診断を次のコーホートに対して行う。
夫妻であること
非喫煙者
夫はその地域の永住者
妻は5年以上の居住者(女性が男性に嫁ぐ社会)
このように限定しないと、
ヒ素含有量と身体の症状の関連性が不明瞭になるのである。
たとえば煙草は発癌成分が含まれており、
同様に発癌作用を有する疑いのあるヒ素の研究にあたっては、
邪魔でしかない。そういった要因を有している人は対象外となる。
そういった形でデザインされた研究の施行は、
ボランティアを必要としているために、
倫理性が認められた後でないといけない。
そういう判定を下す委員会が、
自分が所属する大学院とバングラデシュの医学界に存在する。
その判定をクリアし、実際に研究が運ばれるのである。。。
−−−
研究の大枠を説明してもらったとはいえ、
仕事に必要な血液のサンプルが来ない。
インタービュアーとドクターにつき従う。
バスに乗り込み、街をでた。
舗装されていない地域をどんどん進んでいくと、
昔々、社会の教科書で見たような、、、
どこまでも広がる畑とそこを耕している牛、
とてもとても新鮮な思い。。。
出発してから1時間程でとある集落に到着。
ここからフィールドワーク?と思ったが、どうやらただの休憩。
茶屋のようなところで1度は腰を落ち着かせたのだけど、
10分程でまた出発とのことで、
その10分間、単独で歩き回った。
1日で組み立てられそうな家屋。
商店街のような雰囲気で、活気にあふれていた。
道なりの軒並みで、その裏は広々とした畑やら林である。
とはいえ、都市の要素も進んでいるという感じで、
黒い煙を撒きながら大型トラックが通ったり、
店構えが映画か音楽のチラシで飾られていたり、、、
まさに発展途上という地域だった。
再出発して、
これ以上の田舎っぷりはもうないだろうというぐらいの地域に。
しばらくして、ドクターが降りる合図。インタビュアーと3人で下車。
そこから、そんな田舎でも通るリキシャを拾いまた10分ほど移動。
目的の村にようやく到着。片道2時間強だった。
時代の流れが止まったような村。
ヒトも含めいろんな動物がうろうろしている。
記録された名前と充てにならない住所とで
すれ違う人々に確認しながら、しばらくして
最初のレスポンデントの家屋に着。お邪魔する。
生活に基づくアンケートと、医療診断。
(1/5に続く)
ヒ素に汚染された地域では、
その毒性に伴って、いろいろな疾患があり、
さらにその毒性の程度も場所によってさまざま。
個人の栄養摂取によって、暴露の影響も変わってくる。
NIHによる5年間の資金援助でデザインされた研究は、
データベースの作成から始まった。
ヒ素が井戸水より過剰に摂取されることが背景とされ、
まず、限定された地域の井戸水のヒ素含有量が測定、格付けされる。
それと同時進行で、その地域の研究対象者の、
体重、水の摂取状況、食料摂取状況、
病暦、生活習慣そして診断が行われる。
このプロジェクトは、retrospective researchで、
過去のさまざまな要因を、ヒ素の毒性と関連づけるのであるから、
診断することが研究の目的で、望ましくない状況にある対象者には、
予防の手立てを示すことにしているという。
井戸水がヒ素で汚染されていることを伝え、
予防策を教えることになるのだが、問題が多々ある。
?ヒ素の汚染は味覚、嗅覚、視覚では、確認できず、
ヒ素を高濃度含んでいても、水は澄んだままなのである。
つまり、村々に住む人にとって、汚染されているといっても納得しにくい。
?予防としての1つが、ヒ素に汚染されていない、
湖水や川の水などの、地表に現れた水を用いることだが、
これらの水はバクテリアを含んでいるので、熱で殺菌することが必要になる。
しかし、燃料の問題があり実践されにくい。?のために、
懐疑心を抱いてしまうと、もう避けられてしまう改善策なのである。
?ヒ素で汚染されている地域には、
特別な技術が施された安全な井戸を設置し、
その水を用いるように勧めるのだが、数が限られているために、
利用するとしても、水のために移動することが必須となる。
そんなのは嫌ということで、
安全に感じ取れてしまう水を使用してしまうという。
現状として、安全な水への容易なアクセスは、
限られた地域でしか、実施されていないとのこと。
診療についてはいろいろと細かい。
何よりもまず、研究の一環である事実を伝え、
それに協力してもらえるのか否かが問われる。
否定されればそこで終了。疫学はボランタリティが大前提。
社会的な内容から内科的な内容に診療が及ぶ。
水の摂取については、
グラスで何杯の水を飲むの?という質問とともに、
いつも使っているグラスの容積を計るという手段、
および、どこの井戸水を使っているかという答えから、
1日のヒ素摂取量を割り出す。
食物の摂取についても、
どれほどの期間(年、月)、どれほどの頻度(週、日)で
摂取しているか、さまざまな食材の1つ1つについて問う。
その1つ1つについて、ヒ素含有量がデータ化されているので
それから、食料からのヒ素の摂取を算出するとのこと。
体重は、基礎データであるとともに疾患の警笛にもなりうる。
AIDSのように体重の現象が著しい疾患などのように。
診断の対象は、ヒ素汚染だけではなく多種多様。
diabetes
hypertention
cancer
医学博士号所有者がせっかく診断するのだから
可能な限りの検診はしておこうというのは理解できるし、
何よりも、データをまとめたときに、
症状と過剰のヒ素との関連を見出せれば、
新しい医学的な解決策への糸口になる。
ヒ素毒に由来する症状で良く知られているのが、
meranosis (紫外線で有名な「メラニン」の過剰合成、皮膚のしみ)
leucomeranosis (meranosisが進んで、白い斑点になる症状)
keratosis (手足に現れる魚の目のようなしこり)
という、皮膚の症状なのだが、
これらは他の「有る・無し」で判断される症状より詳細に、
発症場所、おおよその面積が調べられる。
そして最後に尿検査。
たんぱく質、糖質などの含有量がおおまかに定量化される。
女性の尿に含まれる血液量については生理の影響があるので、
その検討も必要になってくる。
仕事内容で考慮すべきなのは衣服・染料業である。
染料自体、その製造過程ではヒ素にさらされる機会が多いらしい。
バングラデシュやインド特有の、
鮮やかな色彩の衣服業界の裏まで
ヒ素の問題が及んでいるということである。
またヒ素毒について?にあるように、
経済状態もヒ素暴露と関連があるので記録される。
以上に加え、教育の履歴なども記録される。
これらの診断を次のコーホートに対して行う。
夫妻であること
非喫煙者
夫はその地域の永住者
妻は5年以上の居住者(女性が男性に嫁ぐ社会)
このように限定しないと、
ヒ素含有量と身体の症状の関連性が不明瞭になるのである。
たとえば煙草は発癌成分が含まれており、
同様に発癌作用を有する疑いのあるヒ素の研究にあたっては、
邪魔でしかない。そういった要因を有している人は対象外となる。
そういった形でデザインされた研究の施行は、
ボランティアを必要としているために、
倫理性が認められた後でないといけない。
そういう判定を下す委員会が、
自分が所属する大学院とバングラデシュの医学界に存在する。
その判定をクリアし、実際に研究が運ばれるのである。。。
−−−
研究の大枠を説明してもらったとはいえ、
仕事に必要な血液のサンプルが来ない。
インタービュアーとドクターにつき従う。
バスに乗り込み、街をでた。
舗装されていない地域をどんどん進んでいくと、
昔々、社会の教科書で見たような、、、
どこまでも広がる畑とそこを耕している牛、
とてもとても新鮮な思い。。。
出発してから1時間程でとある集落に到着。
ここからフィールドワーク?と思ったが、どうやらただの休憩。
茶屋のようなところで1度は腰を落ち着かせたのだけど、
10分程でまた出発とのことで、
その10分間、単独で歩き回った。
1日で組み立てられそうな家屋。
商店街のような雰囲気で、活気にあふれていた。
道なりの軒並みで、その裏は広々とした畑やら林である。
とはいえ、都市の要素も進んでいるという感じで、
黒い煙を撒きながら大型トラックが通ったり、
店構えが映画か音楽のチラシで飾られていたり、、、
まさに発展途上という地域だった。
再出発して、
これ以上の田舎っぷりはもうないだろうというぐらいの地域に。
しばらくして、ドクターが降りる合図。インタビュアーと3人で下車。
そこから、そんな田舎でも通るリキシャを拾いまた10分ほど移動。
目的の村にようやく到着。片道2時間強だった。
時代の流れが止まったような村。
ヒトも含めいろんな動物がうろうろしている。
記録された名前と充てにならない住所とで
すれ違う人々に確認しながら、しばらくして
最初のレスポンデントの家屋に着。お邪魔する。
生活に基づくアンケートと、医療診断。
(1/5に続く)
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